角膜上皮細胞シート

ガイドラインID 2010-HN--RE-007
発出年月日
発出番号 平成22年1月18日付薬食機発0118第1号
WG名
制度名
製品区分 再生医療・遺伝子治療
分野

再生医療

GL日本語版ファイル

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1.はじめに
ヒト由来細胞・組織を加工した医薬品又は医療機器(以下「細胞・組織加工医薬品等」という。)の品質及び安全性を確保するための基本的な技術要件は、平成 20 年 2月 8 日付け薬食発第 0208003 号厚生労働省医薬食品局長通知(以下「ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の指針」という。)及び平成 20 年 9 月
12日付け薬食発第 0912006号厚生労働省医薬食品局長通知(以下「ヒト(同種)由来細胞・組織加工医薬品等の指針」という。)に定められているところである。
本評価指標は、ヒト由来細胞・組織加工医薬品等のうち特に角膜上皮障害等の治療を目的として適用されるものであって細胞シート状の製品について、上述の
基本的な技術要件のうち当該製品特有の留意すべき事項を示すものである。

2.本評価指標の対象
本評価指標は、角膜上皮障害等の治療を目的として適用される細胞・組織加工医薬品等のうち特に細胞シート状の製品について、基本的な技術要件に加えて品質、有効性及び安全性の評価にあたって留意すべき事項を示したものである。
なお、開発する細胞シート製品が医療機器に該当するか判断し難い場合は、必要に応じ、厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室に相談すること。

3.本評価指標の位置づけ
本評価指標は、技術開発の著しいヒト由来細胞・組織加工医薬品等を対象とするものであることを勘案し、留意すべき事項を網羅的に示したものではなく、現時点で考えられる点について示している。よって、今後の更なる技術革新や知見の集積等を踏まえ改訂されるものであり、申請内容に関して拘束力を有するものではない。
製品の評価にあたっては、個別の製品の特性を十分理解した上で、科学的な合理性をもって柔軟に対応することが必要である。
なお、本評価指標の他、国内外のその他の関連ガイドラインを参考にすることも考慮すべきである。

GL:本体

4.用語の定義
本評価指標における用語の定義はヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の指針及びヒト(同種)由来細胞・組織加工医薬品等の指針の定義による他、以下のとおりとする。
(1) 角膜上皮:角膜は表面から、角膜上皮層、角膜実質層、角膜内皮層の3層構造をしている。角膜上皮層は4~5層の角膜上皮細胞から構成されている組織である。
(2) 角膜上皮障害:角膜輪部に存在する角膜上皮幹細胞が、外傷や疾病によって完全に消失したため、角膜表面が混濁した結膜組織に被覆された状態
(角膜上皮幹細胞疲弊症)をいう。
(3) 輪部:角膜と結膜の境界部位をいう。輪部の上皮層基底部には角膜上皮の幹細胞が存在している。
(4) 細胞シート:細胞同士、または細胞と支持体が結合してシート状の形態を呈したものをいう。
(5) 支持体:細胞をシート状に形成するための足場となるものをいい、移植・投与される細胞シート製品に含有されるか否かを問わない。なお、支持体の原料として生物由来の原材料が用いられる場合もある。
(6) バリア機能:角膜上皮層のような重層化している上皮細胞層では、表層細胞の細胞間がタイトジャンクションという接着構造で強固に結合して、異物や水などを自由に通さない構造となっている。この機能をバリア機能という。
(7) 細隙灯顕微鏡(スリットランプ)検査:角膜を含めた眼の表面を拡大して観察する眼科臨床検査のひとつをいう。

5.評価に当たって留意すべき事項
(1)製品の品質管理
細胞シート製品の品質管理における留意点として、例えば以下に挙げた事項を含めて検討し、製品の特性に応じて適切に品質管理項目に反映することが必要と考えられる。必要かつ適切であれば、別の試験項目、試験方法等の採用又は追加を検討すること。また、各項目について試験項目及び試験方法の妥当性を説明する必要がある。
なお、移植に供する細胞シート製品そのものの評価が困難な場合は、スペアシート(移植枚数に品質管理用のシートも加えた枚数を製造し、無作為に抜き取ったシート)等による評価も考えられる。
①形状について
位相差顕微鏡観察や組織切片の作製等により、細胞シートの形状(面積、穴・欠損の有無等)、細胞の重層化の程度等を確認する。 ②構成細胞、細胞の特性等について
以下のような評価が考えられる。
・位相差顕微鏡観察等により、上皮細胞様の細胞形態が観察されることを確認
・細胞の増殖性の確認
・細胞の生細胞率の確認
・各種細胞マーカーを用いた、細胞シート内の構成細胞のポピュレーション及びその分布等の確認
・細胞シートの作製に当たり、フィーダー細胞を使用する場合は、細胞シート製品内への残存量の評価
③バリア機能について
例えば、バリア機能との相関が報告されている適切なマーカーの発現解析、細胞重層化の定量、経上皮電気抵抗値(TEER;Trans Epithelial Electrical Resistance)の測定等により、細胞シートに要求される機能の評価を検討する。
④細胞シート製品の運搬について
細胞シート製品を運搬する場合には、運搬容器及び運搬手順(温度管理等を含む。)等を定め、容器内の環境等が適切に管理され、製品の品質、有効性及び安全性が確保されることを示すこと。その際、特殊な機能を有する培養皿を使用する場合はその特性を考慮すること。
例えば、温度感受性培養皿のように細胞シートを製造するために細胞との接触面に特殊処理を施している場合、当該培養皿を用いて製造された細胞シート製品は、温度低下により細胞が培養皿から脱着して細胞生存率や細胞機能が低下する可能性があるため、輸送の際は温度管理が特に重要となる。
⑤支持体について
羊膜やフィブリンゲル等の支持体を用いる場合、必要に応じて規格を設定し、支持体が目的とする機能を有することを評価する必要がある。また、安全性(例えば、感染症や異物反応等)について説明する必要がある。

(2)非臨床試験
妥当な疾患動物モデルと、そのモデル動物に由来する原材料を用いた同等品作製および品質保証技術が確立されている場合には、可能な限り、モデル動物を用いた非臨床試験を行うことが望ましい。疾患モデル動物としては、例えば、ウサギ、イヌ、ブタ、サル等の中大型動物を用いた角膜上皮幹細胞疲弊症モデル等が考えられる。用いた動物モデルの作製方法、試験デザイン、評価期間、評価方法等の妥当性について説明する必要がある。有効性の検討には、適切な対照群を設定し、統計学的手法を用いて評価することが望ましい。
検査項目としては、例えば以下を検討することが考えられるが、必要かつ適切であれば別の試験項目及び試験方法の採用又は追加を検討すること。なお、各試験項目及び試験方法の妥当性を説明する必要がある。
①細隙灯顕微鏡検査による角膜の評価
細隙灯顕微鏡検査により、角膜の透明性、角膜上皮欠損の有無等角膜上皮の状態を評価すること。
眼感染症、同種移植の場合の拒絶反応等の有害事象の有無、結膜組織や血管の侵入の程度及びバリア機能の維持等を確認することにより、角膜表面が目的とする細胞・組織により被覆されていることを評価すること等が考えられる。
また、角膜の透明性、角膜上皮障害等の評価に当たっては、例えば、Grade 分けし、スコア化して評価を行うことが考えられるが、この場合、スコア化の妥当性について十分に合理的な説明が必要である。
②形態学的評価
移植後の角膜組織を経時的に採取し、HE 染色、免疫染色法などにより角膜上皮の状態を評価する。血管浸入の有無、細胞シートの生着、角膜上皮の重層化の程度、角膜上皮を構成する細胞のポピュレーション及びその分布等を確認することが考えられる。(例えば、線維芽細胞、杯細胞等の有無や角膜表面が目的とする上皮細胞により被覆されていることを確認する等)

(3)臨床試験(治験)
治験実施計画書(安全性及び有効性の評価項目を含む。)は、対象疾患、目的とする効能及び効果、当該治療法に期待される臨床上の位置付け等に応じて、非臨床データ等も踏まえて適切に計画されるべきである。

GL:付属資料

引用関連規格

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