コンピュータ診断支援装置

ガイドラインID 2011-HN-DI-014
発出年月日
発出番号 平成23年12月7日付薬食機発1207第1号
WG名
制度名
製品区分 診断薬
分野

コンピュータ診断支援装置

GL日本語版ファイル

英文タイトル
GL英語版ファイル

GL:イントロ・スコープ

1. はじめに
コンピュータ診断支援(Computer-Aided Diagnosis:以下CAD)とは、X線画像に代表される放射線画像をはじめとする医用画像に対して、コンピュータで定量的に解析された結果を「第2の意見」として利用する「医師による診断の支援」である。CADの目的は、病変候補位置の情報をマーカで医師に示すことによって病変の検出を支援すると共に、がん病巣の悪性度等の病変候補の特徴に関する定量的なデータを医師に示して鑑別診断を支援するものである。
本評価指標は、コンピュータ診断支援装置の特に画像情報処理ソフトウェア部分について安全性と有効性を科学的根拠に基づいて適正かつ迅速に評価するために留意すべき事項を示すものである。

2. 本評価指標の対象
本評価指標は、医療用ソフトウェアのうち装置に付随するものであって、以下のCADe又は
CADx機能を有する製品を対象とする。
開発するコンピュータ診断支援ソフトウェアが医療機器に該当するか判断し難い場合は、
必要に応じ厚生労働省医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室に相談すること。

(1) CADe (Computer-Aided Detection)
画像上で病巣が存在する候補位置をコンピュータが自動検出し、その位置をマーキングする機能を有するソフトウェアが組み込まれている装置であり、コンピュータにより医用画像データのみ又は医用画像データと検査データの両方を処理し、病変又は異常値の検出を支援するものである。

(2) CADx (Computer-Aided Diagnosis)
CADe機能に加え、CADxは病変候補に関する良悪性鑑別や疾病の進行度等の定量的なデータを数値やグラフ等として出力する機能を有するソフトウェアが組み込まれている装置であり、診断結果の候補やリスク評価に関する情報等を提供して診断支援を行うものである。

3. 本評価指標の位置づけ 本評価指標は、技術開発の著しい医用画像工学・計算機科学等を対象とするものであることを勘案し、留意すべき事項を網羅的に示したものではなく、現時点で考えられる点について示している。よって、今後の更なる技術革新や知見の集積等を踏まえ改訂されるものであり、申請内容に関して拘束力を有するものではない。製品の評価にあたっては、個別の製品の特性を十分理解した上で、科学的な合理性をもって柔軟に対応することが必要である。なお、本評価指標の他、国内外のその他の関連ガイドラインを参考にすることも考慮すべきである。

GL:本体

4. 評価に対して留意すべき事項
(1)基本的事項
① 開発の経緯、品目の仕様、国内外での使用状況、設計開発と装置の原理、目標とされる使用方法等(機能及び能力を含む)を明確に示す。

② 以下の事項を参考に、装置の設置、運用に当たっての留意事項等について評価する。

(ア)設置
a.プラットフォームの選択又は制限
b.インストール及びアンインストールの条件と影響
(イ)保守点検
a.周辺機器の稼動、必要資源の利用可能性 b.ユーザ保守
(ウ)トレーニング計画の必要性とその内容
(エ)実行環境の要求事項及び制限(複数ソフトウェアの共存)
a.使用リソース管理
b.実行環境の変更管理
(オ)停電対策(無停電電源装置の要否等)
(カ)電磁波等対策

(2)非臨床試験
以下に示す各事項等を通して、ソフトウェアの安全性及び有効性の評価を適切に行うこと。

① 性能に関する評価 以下の各事項中、該当する項目について、それぞれ具体的なデータをもって明らかにすること。なお、使用データ属性については、モダリティ共通項目のほか、該当するモダリティ依存項目も評価すること。

(ア)検出アルゴリズム(自動化の度合いを含む)
(イ)モダリティ共通の使用データ属性
a.撮像機器
・製品(メーカー/機種/バージョン)
b.撮影時条件
・造影剤:使用/不使用(使用の場合はその種類や使用量、撮影タイミング)
・撮影範囲:大きさと位置(詳細な条件の例:肝臓が全て撮像範囲内にある)
・空間分解能 投影像:基準面でのピクセルの大きさ 断層像:ピクセルの大きさ(スライス面内ピクセルの大きさとスライス厚 及び間隔)
・時間分解能 撮像時間(写真のシャッタースピードに相当)、間隔(時系列画像のみ)
c.画像出力
・デジタル画像信号深度:8ビット/16ビット
・デジタル画像化の際の信号ゲイン
d.保存状態
・非可逆画像圧縮:有/無
e.CADe処理
・一回の検出処理に使用するデータ数:単一/複数(時系列、別条件、マルチ モダリティ等)

(ウ)モダリティ特有の使用データ属性 a.エックス線
・撮影法:直接/間接
・エックス線量(画像当たり単数/複数=DUAL ENERGY等)
・デジタル撮影/フィルムのスキャンデータ
・その他必要な事項
b.エックス線CT
・検出器:シングル/マルチ
・スキャン:ノンヘリカル/ヘリカル
・断層像再構成法(FBP/ART等)及びその条件(再構成フィルタ等)
・X線量(画像当たり単数/複数=DUAL ENERGY等)
・その他必要な事項
c.超音波
・周波数
・走査形式(プローブ型:コンベックス/セクタ/リニア等)
・モード(A/B/C/M/ドプラ等)
・直接出力/間接出力(ビデオキャプチャ等)
・その他必要な事項
d.MRI
・静磁場強度(1.5T/3.0T等)
・撮像種別(T1強調/T2強調/拡散強調等) ・撮像法(Spin Echo法/Echo Planar法等)
・パラメータ(TR/TE、信号収集回数等)
・その他必要な事項 e.その他のモダリティについても、撮像されたデータの画質に影響を及ぼす因子 として、撮影時の条件を撮像装置固有のものも含めて詳細に記述すること。

(エ) 検出性能
臨床画像データを用いた評価は、以下の事項等について行うこと。評価に使用する臨床画像データは、装置の目的や主要評価項目等を踏まえ、検出率や偽陽性・偽陰性率算出に必要なデータ数とし、複数施設のデータを含むものとする。臨床画像データを用いた方法では評価が困難な項目については、ファントム画像を用いて評価する。
a.絶対指標及び相対指標の種類、閾値及びその妥当性(ROC曲線下面積、平均偽陽性数、判定能力等)
b.使用するデータセットの数、種類及びその妥当性 c.速度性能

② 安全性・品質に関する評価
次の設計管理に該当する事項を必要に応じて適用する。
(ア)一般的要求事項
a.電気的安全性
b.品質マネジメント
c.リスクマネジメント
(イ)仕様(稼働装置を含む)
a.ニーズ(ユーザ、規格、規制、標準)
b.インプット及びアウトプット(種類、方法、手段など)
c.個人情報保護
d.セキュリティ
e.警報、警告及び操作者へのメッセージ
f.OTS(Off-the-Shelf)ソフトウェアの特定
g.ユーザビリティ
h.起動、中断及び終了
i.インストール及びアンインストール
(ウ)開発・設計計画
a.開発プロセス
b.成果物
c.開発プロセスを通して実行されたリスクマネジメントのトレーサビリティ d.リリース(複製、パッケージ等)
(エ)検証計画
(オ)構成管理計画
a.OTSを含む管理対象アイテムの特定 b.プロセスとツール
(カ)文書化計画
a.文書開発、レビュー、承認及び改訂の手順と責任 b.ユーザ向け文書(操作及び保守マニュアル等)

参考:IEC 60601-1、ISO 13485、ISO 14971、IEC 62304、IEC/TR 80002-1、IEC 80001-1、
ISO 12207、ISO 90003、IEC 61508-3 等

(3)臨床試験(治験) (参考:平成20年8月4日付け薬食機発第0804001号)
① 治験の要否について
医療機器の臨床的な有効性及び安全性が性能試験等の非臨床試験成績又は既存の文献等のみによっては評価できない場合に臨床試験(治験)の実施が必要となり、臨床試験成績に関する資料の提出が求められる。また、その使用目的、性能、構造等が既存の医療機器と明らかに異なる場合については、原則として臨床試験の試験成績に関する資料の提出が必要である。

②有効性及び安全性の評価
治験を実施する場合においては、対象とする診断支援が実施できることを示すとともに、明確に定義された偽陽性や偽陰性を含む適切なエンドポイントを設定してその有効性と安全性を評価する。治験を実施する場合は、以下の事象に留意して実施計画を立案すべきである。

(ア) コンピュータ診断支援ソフトウェアの特性
(イ) コンピュータ診断支援ソフトウェアを適用する範囲
(ウ) 使用する医師の習熟度の影響

③ 治験の症例数
臨床試験(治験)を実施する場合の症例数は、臨床試験の目的や主要評価項目等を踏まえ、科学的根拠に基づき、コンピュータ診断支援ソフトウェアの有効性や偽陽性・偽陰性率算出に必要な症例数とする。偽陽性・偽陰性率は別途行う臨床診断結果と比較して算出すること。
比較対照をおく場合にあたっては、統計学的に症例数を設定する必要があることに留意すること。なお、対照として既存のコンピュータ診断支援ソフトウェアを使用する場合は、その妥当性について説明すること。
また、信頼できる海外データを承認申請の添付資料として使用できることがあるが、それのみで臨床評価を行うことができるかどうかについては十分に検討すること。

GL:付属資料

引用関連規格

国内関連GL

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WGメンバー

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製品開発状況

Horizon Scanning Report