1. はじめに
生体由来材料は、乾燥豚皮、コラーゲン、ゼラチン等すでに医療機器の材料として用いられてきたが、昨今、従来と比較してより優れた創傷治癒促進効果あるいは組織再構築等の性能を有する生体由来材料及びそれを利用した医療機器の開発が報告されている。ヒトあるいはウシ、ブタ等の異種動物の組織を脱細胞化、凍結乾燥等のプロセスにより加工した材料は、そのまま、あるいは更なる加工を経て、組織の修復・機能回復を目的とする医療機器への応用が期待されている。一方で、既存の生体由来材料を従来と異なる形で加工し、組織再構築能等の新規機能を付与した医療機器の開発も報告されている。これらの生体由来材料の医療応用については、国の定めた原料基準はあるものの、個々の分野で開発されている製品分野毎の承認審査に役立つ評価指標については、まだ具体的に定められていない。欧米においても、現在は我が国と同様に規格・評価指標が不明確であることから、今後の国際的貢献も視野に入れ、本邦の承認審査のための知見の集約及び基本的な考え方の方針を明確にすることが望ましい。
国内外のこのような状況を踏まえ、革新的な医療機器の基盤材料となることが期待されている生体由来材料の評価についての考え方を明確にするとともに、それらを材料とする医療機器の安全性、有効性を適切に評価し、迅速に承認することを目的とした評価基準の策定が求められる。このため、今後開発されることが予想される生体由来材料を利用した
新規機能を有する医療機器を対象とした新たな評価指標を作成した。
2. 本評価指標の対象
本評価指標は、脱細胞化、凍結乾燥等のプロセスにより内在する生細胞を全て除去、又は死滅させた組織を材料として利用、あるいはヒト・動物の組織から抽出・精製したタンパク質等を新規手法により再構築することにより、既存製品と比較して高機能な創傷治癒促進効果あるいは組織再構築等の性能を付与し、損傷した生体組織の機能回復や疾病治癒を目的として製造された医療機器全般を対象とする。また、現時点で本評価指標が対象とする医療機器は、主に、上記目的を達成するため、自己組織に置換され、生体内で分解・吸収されることを意図したものとする。あくまでも医療機器を対象とするものであるため、生きた細胞を有した状態で生体組織を使用する移植用組織や再生医療等製品に相当するものは本指標の対象とはしない。しかしながら、再生医療等製品の原材料として用いる生体由来材料の評価において本評価指標の適用が可能な場合、その適用を妨げるものではない。
3. 本評価指標の位置付け
本評価指標は、近年技術革新の著しい生体由来材料を利用した新規機能を有する医療機器を対象とするものであることを勘案し、その評価にあたり現時点で必要と思われる事項を示したものである。よって、今後の技術革新や知見の集積等を踏まえ改訂が必要なものであり、承認申請内容等に関して拘束力を有するものではない。
生体由来材料を利用した医療機器の評価に関しては、個別の製造方法及び製品特性を十分に理解した上で、科学的な合理性を持って、柔軟に対応することが必要であり、また、本評価指標以外に現存する国内外の関連ガイドライン等を参考にすることも考慮すべきである。
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